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このページは施行前の法律について書かれているため、未確定な事項もあります。末尾に執筆時期を記載しており、あくまで執筆時点における情報ですのでご留意ください。
2024年5月17日に、離婚後共同親権を導入する改正民法が成立しました。
成立から2年以内に施行(=法律の効力が実際に始まる)されるとされています。
まだ具体的な施行時期は明らかにされていませんが、行政や家庭裁判所の対応準備等が必要と思われますので、おそらく2026年4月頃から施行されるのではないかと思われます。
夫婦に未成年の子がいる場合、これまでは離婚の際に必ず父又は母どちらかを親権者と指定し、父か母いずれかが単独で親権を行使することとされていました。
しかしながら、改正民法が施行されますと、離婚の際に父または母の単独親権だけではなく、父母の共同親権を選択することが可能となります。
共同親権と言っても、必ずしも父母が子どもと一緒に住んで養育をする(いわゆる共同監護)ことが想定されているわけではありません。
共同親権であっても、通常は離婚後の監護者は父又は母のどちらか一方であることが多いと考えられます。
監護を除く親権者の権利義務としては、①子の代理権や、②子の財産管理権などが挙げられます。
①子の代理権の代表的なものとしては、私立学校との間の入学契約締結や、子が一人暮らしをする際の賃貸借契約締結、携帯電話の申し込みなどが挙げられます。
②子の財産管理権とは、子ども名義の預金通帳を作ったり、解約したりすることが考えられます。
共同親権になると、これらの行為について、原則として父母が協議の上で足並みを揃えて契約等を行うべきことになります。
親権についての協議がまとまらない場合には、家庭裁判所が判断することになります。基本的には離婚調停→離婚訴訟の中で判断を求めることが多いですが、改正法では、親権に争いがある場合に親権者の指定を求める調停・審判を申し立てをすれば、まだ親権の判断が出ていない段階でも離婚届を提出することができるようになります(ただし、離婚をすることについては双方の合意が必要です)。
家庭裁判所は、共同親権にするか単独親権にするかを決める場合、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならないとされています(改正民法819条7項)。また、子に対する虐待の恐れや、配偶者に対するDVの恐れがある場合には、単独親権にしなければならないとされています。
他方で、これらの恐れがない場合に、共同親権になる割合が多いのか、単独親権になる割合が多いのかは、まだわかりません。
特に、DVまではないものの、父母の関係が険悪で高葛藤の場合に、家庭裁判所が単独親権にするのか共同親権にするのかは、弁護士としても興味があるところであり、改正民法の施行後の裁判例の蓄積が待たれるところです。
共同親権であっても、①監護及び教育に関する日常の行為(改正民法824条の2第2項)や、②子の利益のため急迫の事情があるとき(改正民法824条の2第1項3号)には、単独で親権を行使できます。
①の例としては、日常的な疾病で病院に通院する場合や、塾やスイミングスクールなどの習いごとの申し込みなどが考えられます。
②の例としては、事故に遭ってすぐに手術や入院が必要なときの申し込みや、大学に合格して入学申し込み期限が非常に迫っているときなどが考えられます。
改正民法が施行されますと、施行前に既に離婚している人(=単独親権)も、家庭裁判所への親権者変更の申し立てをし、家庭裁判所が認めれば、共同親権に変更することが可能となります。
この点、父母双方が共同親権への変更に合意しているのであれば、家庭裁判所も親権者変更(共同親権への変更)を認めることになろうかと思われます。
他方で、非親権者から共同親権への変更の申し立てがなされ、親権者が反対をしている場合に、家庭裁判所が共同親権への変更についてどのように判断するかについては、実際に法改正後の運用をみないとわからない面があります。
現在の親権者変更制度は、一方の親権を奪って他方に親権を与える制度でもあるため、非常にハードルが高く、子に重大な不利益が生じているような場合でなければ親権者変更は認められません。
他方で、改正後の単独親権から共同親権への変更は、一方の親権を奪うものではないため、従前の親権者変更よりも認められやすくなる可能性はあると思われます。
まず、今離婚をしても単独親権者となることが難しいが、離婚後共同親権を強く望むという人の場合、今すぐ離婚をせずに法改正を待つ意味はあるかもしれません。
他方で、今離婚をしたら単独親権者になれるであろうし、今後も単独親権者でいたいという人の場合、法改正前に離婚を進める意味はあるでしょう。もっとも、法改正前に離婚が成立して単独親権者となっても、法改正後に相手方から親権者変更(共同親権への変更)を求められる可能性はあります。
ただ、実際問題として、共同親権と言っても共同で監護養育をするというわけではなく、あくまで親としての責務の観点が強いです。また、父母の関係が険悪な場合、子どもの進学や契約について円滑な話合いをすることが難しい場合もありますので、本当に共同親権にすることがよいのかどうかは慎重に検討されることをお勧めします。
なお、一緒に住んでいない親と子どもの面会交流については、共同親権とは別問題であり、共同親権でも単独親権でも子どもとの面会交流権は子の福祉に反しない範囲で認められます。
執筆者:弁護士中井陽一 記事作成日:2024年5月28日
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